「ブランドエクイティ」からブランドの持つ価値を見つめ直す

ビジネス・ブランド,研究

written by Takuma Ise.

しっかりと想いや考え方を持ってブランドを作ったけれど、何かしっくりきていなかったり、思うように売り上げが成長していないこともあると思います。またはブランドを立ち上げて、これから運用していこうと思っているけどどう進めていって良いかわからないというケースもあるでしょう。

もしかするとその原因は、ユーザーとの関係性をあまりまだ考えきれていなかったり、ブランド活動における施策やアクションそれぞれの目的や現在位置が見えづらくなっているかもしれません。
そういった場合はまず「ブランドの持つ価値=ブランドエクイティ」を整理することから始めましょう。

「ブランドエクイティ」とは何か?

まず、ブランドエクイティのロジックとして有名なものの一つであるアーカーモデルに沿って説明を記載します。このロジックはディビッド・アーカー氏が提唱したもので5つの要素から構成されています。

【ブランドロイヤリティ】
ブランドに対する愛着や忠誠、信頼度のことを指し、ブランドエンゲージメントやコアなファンなどと近い意味合いです。ブランドロイヤリティが高いユーザーは継続的な購入・利用するケースが多かったり、周囲にそのブランドを推奨してくれることもあります。

【ブランド認知】
そのブランドがどれだけ知られているかというポイント。
もしかすると元々はブランドの知名度を指していたかもしれませんが、現在では知名度はもちろんですがどちらかというとそのブランドがどういうブランドであるかという、より深いレイヤーで理解されているかというポイントで見るべきだと考えています。なぜかというと、ブランド認知の施策として広告コミュニケーションを取る場合ももちろんありますが、PRや口コミといったブランドオーナー側でコントロールできないブランド認知の場合に伝言ゲーム的に違って伝わることもあり得るからです。

【知覚品質】
ユーザーが判断するブランドの品質。
そのブランドの商品やサービスを利用した上で評価するもので、使い勝手などの機能的価値や、その際に抱く感情といった情緒的価値、ブランドを通して自分がどうなれたかの自己実現価値などがあります。

【ブランド連想】
ブランドの名称やシンボルから連想するものです。連想するのはあくまでもユーザー側なので人それぞれブランドのどの部分を切り取って頭の中に存在しているかによりますが、事業内容だったり、質の良し悪しだったり、あるいはパーソナリティだったりすると思います。
個人的な連想ですが、例えばUNIQLOさんだと「思想のある、質が良いカジュアルウェア」だと感じます。なぜかというとおそらく、「ただ安いものを売っているのではなく、求めやすい価格で質が良いものを提供されている」と自分が感じているからで、また社会的意義のある活動も積極的に行なっているイメージが記憶に残っていたり、UTではアートやカルチャーを、Tシャツというキャンバスを通じて敷居を低く接続してくれている印象があるからだと思います。

【その他のブランド資産】
上記の「ブランドロイヤリティ」「ブランド認知」「知覚品質」「ブランド連想」以外のブランドの無形資産のことです。(正確にはこの4つも含まれると思いますが、定義がややこしくなるため「以外」としています)
具体的にはブランドに対して利益を生む、特許や商標権、著作権、知的所有権や、独自テクノロジーやノウハウ、取引先・ユーザーとのネットワークなど無形価値のことで、有形の商品などとは区別されるものの、その商品には独自のテクノロジーやノウハウが詰め込まれていたり、特許や商標権は権利を守っていたりと、相互に作用する関係性にあるものです。

なぜブランドエクイティが大切なのか?

個人的な視点ですが、一言でまとめると「ブランド活動の目的を明確にし、且つプロジェクトを円滑するため」だと思っています。

一つ目の理由は、他の記事でも触れさせていただいた通り、昨今のプロジェクト進行においては各フェーズにどういう意味や価値があるかが重要だからで、企業様や各ブランド活動に投じられる資金やリソースが潤沢であれそうでなかれ、何のために投じる資金やリソースであるかは明確にしないと決済や稟議は通過できない世の中だからです。

二つ目の理由は、ブランドオーナー側も各施策やアクションにどういう目的があるかが明確である方が企画やアイデアの輪郭もはっきりするから。
当然といえば当然ですが、例えば、施策Aは購入アクションを促すため、施策Bはブランド認知、施策Cはブランドエンゲージメントアップ、のようにできるとKPIも設定しやすく、チームで目的意識や判断基準をしっかり持って活動できるので、結果としてユーザー側にも伝わりやすくなるはずだと思います。

三つ目の理由は、価値の整合性
ユーザーが商品・サービスを購入・利用する際には、何かしらの価値を感じています。
ですが、ブランドオーナー側とユーザー側でブランドの価値が合致しなければ、せっかく良い商品やサービスであったとしても、ユーザーにとってのベネフィットや体験できる価値が伝わっていない・理解されていないという現象が発生します。
だから、ブランドオーナー側とユーザー側で商品やサービスに対する価値の整合性を取る必要が出てくるのです。

ロジックを定義から関係性へアップデートしてみる

前述の通り、ブランディング活動における各々のアクションがどういう価値を持つのかを認識し、共有しなければ一方通行のコミュニケーションや価値提供となってしまいます。ですので、それぞれのエクイティがどう機能していくのかを理解していないと、何にコストをかけているのか、何に投資していくべきなのかが明確にならないので、例えばブランド担当者が上長やブランド関係者に計画を説明・実行していくのかが説明できないので、共感してもらえないという状況が起こり得ます。

上記のアーカーモデルはブランドの持つ価値(エクイティ)わかりやすく分解して定義されたもので、別の著名なフレームワークでいうとブランドエクイティ・ピラミッドのような価値の積み上げや関係性を記したケラーモデルなどがありますが、このフレームワーク(ボルケーノモデル)は、実際に新規ブランド立ち上げのプロジェクトの中で、運用フェーズでどのような意識を持ってアクションをしていくかのコンセンサスをクライアントを含めたプロジェクトチームで認識を合わせるために開発・使用したものです。

実際に使用してみた学びとしては、必ずしもフレームワークを使用すればうまくプロジェクトが機能するというシステマチックな意味ではなく、こういった一つの物差しがあることで基準が設けられ、それを基に議論が生まれました。
アクションを検討する際、最終的には一つの方向に決定するものの、複数人が関わることが一般的なプロジェクトにおいて、意見を無理にひとつにまとめるのではなく、目的をハッキリさせながら納得のいくブランド構築やアクションが行うという点が本質的で、それがブランドの持つ価値を最大限に発揮することにつながると考えています。

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