物語のアイディアを生成してくれるシートをつくってみた

コンテンツ,ストーリー

written by Fumiya Mizukawa.

なぜ、物語はつくられるのか?

人類が誕生して以来、数多くの物語が生まれています。なぜ物語は創作され、語られるのでしょうか?その答えの一つは、人を楽しませるから、でしょう。

しかし、物語は人をただ楽しませるだけのものではありません。世の中に存在する多くの物語は、作り手のメッセージを届けるために巧みに構成されています。

例えば、ディズニーやピクサーのアニメーションは、人をワクワクさせる物語のなかに愛や友情、最近だと多様性や人種差別といったテーマが息づいています。鑑賞者は物語に引き込まれ、楽しみ、映画を見終わる頃には自ずと製作者からのメッセージを受け取っているはずです。

もし、ディズニーやピクサーが「相手を思いやろう」「自分を偽らずありのまま生きていい」と、伝えたいメッセージだけ伝えても、そりゃそうだよね、で終わったことでしょう。

このように、メッセージを伝えるためには、面白い話を仕立てて聞いてもらう状態をつくる必要があります。物語はメッセージを届けるためのメディアと言えます。メッセージを届けるために物語を語る。これは、人類が物語を創作し語ってきた“機能的な”理由だと思います。

伝えたいメッセージを聞いてもらうために物語をぜひ活用したいところですが、物語なんてそうそう思いつくものではありません。

物語のアイディアが簡単に思いついたら楽なのに。

アイディアに枯渇し企画に行き詰まると、ついこんな欲が出てしまいます。なかなか難しいことですが、物語の構成パターンを見出すと、無理な話ではないのでは?と思えてきます。この記事では、個人的な試行錯誤の過程で導き出した、“物語の種”を生み出す方法を紹介します。

必要最低限の要素を考える

物語とは、一言でいうと主人公が変化(成長)する話です。物語の始まりと終わりを比較すると、主人公の心情に変化が見られるはずです。(多くの場合、この変化と変化の過程に作り手のメッセージが潜んでいます。)そして、この過程では必ずと言っていいほど主人公にトラブルが降りかかります。主人公が苦しみながらもトラブルを克服することで、主人公自身に変化が生まれ、物語は締めくくられます。

つまり、

「主人公はどんな人間で、どんな状況に置かれていて、どんな行動をした結果、最初と比較して)どのように変化する」

この設定を深めていくと物語が成立します。

さらに、私自身が多くの映像作品に触れて気づいたことがあります。それは、面白い物語には、登場人物と世界観(状況設定)に魅力があるということです。どうやら、「どこか愛せるキャラクター」と「惹き込まれる状況設定」の2つが、面白い物語に必要な最低限の要素みたいです。ということは、「主人公」と「状況設定」が考えられれば、最低限の物語の種が開発できそうです。

物語のアイディア生成シート(試作版)の完成

まずは、物語に必要な最低限の要素を用いて、物語を構文化してみます。おさらいすると、面白い物語に必要なのは以下の要素です。

  • 物語は主人公が変化(成長)する過程を描いたもの
  • 主人公と状況設定に魅力があること

これらを踏まえて、以下の構文を考えました。

構文:〇〇な主人公(××)が、△△が起きて◇◇する話

あとは、〇〇、××、△△、◇◇の部分に思いつく限りの言葉を書き出すだけです。

ちなみに、書き出す段階で構文を完成させようとすると、難易度が高まります。そのため、〇〇、××、△△、◇◇はそれぞれ独立して書き出す方がずっと簡単です。

このように、思いつく限り書いていきます。書き出すのに困ったら、好きな映画やドラマを参考に要素を持ってきてもいいかもしれません。

そして、関数を使って、書き出した言葉を構文通りにランダム表示させます。

出現したのが、こんな物語の種でした。

なぜ歌がうまい高校生が犯罪に巻き込まれてしまったのか?そして、どのようにして人々に感動を与えたのか?ズボラな役者が時空を超えるって、どんな状況なのか?物覚えが悪い工事現場の男って、いったいどんな人物なのか?ツッコミどころの多い短文ですが、それぞれなんとなくストーリーがイメージでき、興味が沸く内容です。この「ツッコミ」を掘り下げていくと、厚みが増して物語を成立させることができそうな予感がします。

最後は人の手

いうまでもなく、ここから何を生み出すかが大事になるため、結局は物語を膨らませる技術が必要です。しかし、0からアイディアを考えないといけなくて途方に暮れる ということは解決されたように思います。

また、冒頭でお伝えしたように、物語はメディアとしての側面を持っています。伝えたいメッセージをこのように生成した物語に織り交ぜていくことで、人々を楽しませつつメッセージを届けることができるのではないでしょうか。

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